EC物流ブログ

2025.07.10
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越境ECとは?メリットや課題、始めるのに必要な手順も解説

国内市場の成熟や人口減少により、新たな販路を模索する企業が増えてきており、注目を集めているのが「越境EC」です。越境ECとは、インターネットを通じて国境を越えて商品を販売するビジネスモデルのことで、日本製品の品質やブランド力を武器に海外展開を図る手段として注目されています。しかし、チャンスが広がる一方で、物流や文化の違い、為替リスクなどの課題も存在します。

そこで今回は、越境ECの基本的な仕組みや市場動向、導入するメリットや課題、そして始め方の手順について解説します。グローバル市場での新たな可能性を見出したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

越境ECとは?

越境ECとは、国境を越えて商品やサービスをオンラインで売買する取引のことです。具体的には、消費者が海外のECサイトから直接商品を購入したり、海外企業が日本の消費者に商品を販売したりします。

越境ECの市場規模

世界のEC市場全体の動向を見ると、2023年の世界のBtoC-EC市場規模は5.82兆USドル、EC化率は19.4%と推計されています。この市場はさらに拡大すると予想されており、2027年までには約7兆9600億USドルに達する見込みです。その背景には消費者の越境EC認知度の上昇、自国にない商品への取得欲求、安価な商品の存在、物流レベルの向上などがあると考えられます。

2023年の日本・アメリカ・中国の3カ国間における越境ECの市場規模(推計値)は以下の通りです。

国名 総市場規模 日本消費者
への販売額
アメリカ消費者
への販売額
中国消費者
への販売額
日本 4,208億円 3,768億円 440億円
アメリカ 2兆5,300億円 1兆4,798億円 1兆502億円
中国 5兆3,911億円 2兆4,301億円 2兆9,610億円

出典:令和5年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省

越境ECが成長・拡大している理由

越境ECの拡大を牽引しているのは、インターネットとスマートフォンの普及です。特にスマートフォンの普及により、消費者は時間や場所を選ばずにオンラインショッピングを楽しめるようになりました。

日本製品の品質と安全性は海外で高く評価されており、越境ECにおける大きな強みです。海外では手に入りにくい日本の商品が多く、これが外国人消費者の購買意欲を刺激しています。例えば、ある調査では、訪日後に越境ECを利用したいと考える外国人消費者が8割以上に達しているという結果もあり、今後も需要の増加が期待されるでしょう。

さらに、決済手段の多様化も越境ECの成長を後押ししています。消費者が安心して購入できる環境が整備されたことで、越境ECの需要は今後も増加していくと予想されます。

越境ECのメリット

日本市場において、企業の成長戦略として越境ECが注目されています。これは、国内にとどまらず海外市場へ目を向け、新たな顧客層を獲得して売上拡大を目指すものです。ここでは、越境ECのメリットについて解説していきます。

国内だけでなく、海外市場へも進出できる

日本のEC市場は、少子高齢化や人口減少の影響を受け、縮小傾向にあります。このような厳しい環境の中で、企業が売上を最大化するためには新たな戦略が求められます。そこで注目されるのが「越境EC」です。

越境ECの最大の魅力は、海外の顧客を獲得できる点です。日本製品はその品質の高さや安全性から、世界中で高い評価を受けています。特に、中国やアメリカ、欧米諸国、東南アジア、中東などの地域では、日本製品に対するニーズが高まっており、なかでもアニメや漫画のキャラクターグッズといった日本文化に根ざした商品は、海外ユーザーから非常に高い人気を集めています。

さらに、越境ECは市場全体のパイを広げる手段としても有効です。日本国内の市場が縮小している中、海外市場に目を向けることで、販路や商圏を拡大することが可能となります。

実店舗よりもコストを抑えた出店や店舗運営ができる

越境ECは実店舗に比べ、テナント料や人件費、海外への物流コストといった負担を軽減できます。物理的な障壁を取り除き、より少ない手間で海外販売を始められます。

越境ECを始めるための初期投資は、一般的に数万円から数十万円程度で済むことが多いです。この金額には、サイトの作成やシステムの導入にかかるコストが含まれており、実店舗を開設する際の数百万から数千万円に比べて非常に低いと言えます。

さらに、越境ECでは在庫管理や物流、決済、カスタマーサポートなどの業務を支援するサービスも充実しており、これにより運営にかかる負担を軽減し、効率的にビジネスを展開できます。

海外展開によってグローバル企業としてブランド価値が向上する

越境ECを通じて海外の顧客に直接商品を販売することは、単なる販路の拡大にとどまりません。海外市場での認知度を高めることができ、「国際的なブランド」としての地位を確立することができます。

越境ECを利用することで、海外の顧客から商品の品質や技術力を直接評価され、ブランドに対する評価が高まり、競争力が高まっていきます。

また、越境EC支援サービスを利用することで、各国の法規制(GDPRなど)への対応も可能となり、安全性と信頼性をさらに高めることができます。これにより、顧客は安心して日本製品を購入できるようになります。

越境ECの課題

越境ECは、世界中の顧客に商品を提供できる大きなチャンスです。しかし、その一方でさまざまな課題も存在します。ここでは、越境ECにおける課題について解説します。

配送・輸送コストが高い

国際配送のコストは、一般的に国内配送よりも高額になる傾向があります。これは、関税や輸入税が発生するためです。これらの追加費用は、海外の顧客にとって購入のハードルとなり、結果的に売上に影響を及ぼす可能性があります。

また、越境ECでは、輸送に時間がかかるため、紛失や遅延のリスクが高まります。特に、国際的な物流は複雑で、予期しないトラブルが発生することも少なくありません。

さらに、越境EC特有のリスクとして、海外発行のクレジットカードによる不正利用も挙げられます。これらのリスクは、顧客満足度の低下だけでなく、企業の信頼性にも影響を及ぼす可能性があります。

商品が届くまでに時間がかかる

国際配送は国内配送と比較して、配送にかかる時間に大きな違いがあります。これは、商品の輸送距離が長いことに加え、通関手続きや物流の複雑さが影響しているためです。

海外への配送は国内と比べて時間がかかるため、配送スピードに慣れた顧客にとっては想定以上に遅く感じられることがあります。特に即時配送が当たり前となっている現代では、配送に日数を要することで顧客の不満やクレームにつながる可能性もあるため、事前に十分な説明や納期の明示が求められます。

また、このような配送にかかる時間の長さは、顧客の購買意欲に影響を与えるだけでなく、企業のブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。顧客が商品を待つ間に、他の競合他社に目を向けることも考えられます。

国や地域ごとに異なる対応が必要になる

国や地域ごとに異なる対応が必要になる点は、越境ECにおける課題としてしっかりと理解しておくべきです。さらに、特定の商品が輸出入禁止となっている国や、特別な規制が存在する場合もあります。

また、商品や金額によっては関税が発生し、これが顧客にとっての負担となることがあります。そのため、事前に各国の税関のサイトを確認し、規制や関税についての情報を把握しておくことが重要です。

さらに、現地の商習慣を理解していないと、予期せぬトラブルにつながる可能性があります。例えば、特定の支払い方法が一般的であったり、返品ポリシーが異なっていたりします。これらを無視すると、顧客の信頼を失うことにもなりかねません。

為替の変動による影響を受けやすい

越境ECのリスクの中でも特に注意が必要なのが、為替レートの変動です。越境ECでは、海外の顧客と取引を行うため、通常は外国通貨での決済が行われます。この際、決済時と売上入金時の間に為替レートが変動すると、実際に日本円として受け取る金額が変わってきます。

価格設定を行う際は、為替変動の影響を考慮しましょう。為替ヘッジと呼ばれる手法を用いることで、為替リスクを軽減できます。

また、最近ではPayPalやStripeなど、約100通貨以上に対応できる決済サービスも増えてきています。これらのサービスを利用することで、複数の通貨での取引が可能となり、為替リスクの管理が容易になります。多通貨対応の機能を持つサービスを活用することで、リスクを分散し、より安定した収益を確保することができるでしょう。

越境ECを始めるのに必要な準備や手順

越境ECを成功させるには事前の周到な準備と戦略が重要です。ここでは、商品の選定から販売後のデータ分析まで、越境ECを始める上で押さえておくべき重要な手順と成功のポイントを解説します。

1.取扱い商材とターゲット市場の選定

越境ECを成功させるためには、取扱い商材の選定が非常に重要です。海外で需要の高い日本製品としては、化粧品、菓子・スナック類、伝統工芸品のほか、食品サンプル、カメラ関連商品、中古ブランドバッグ、美容機器などが挙げられます。これらの商品は、日本ならではの品質やデザイン性が評価されており、多くの国で人気を集めています。

ただし、対象国でのニーズを確認するためには、文化や消費者の嗜好を考慮する必要があります。また、現地の法律や規制も確認し、輸出が可能かどうかを調べることが重要です。特に食品や医薬品は、各国で厳しい規制があるため、注意が必要です。

中国やアメリカ、東南アジアの市場では、日本製品への需要が高まっており、ビジネスチャンスが広がっている状況です。市場選定においては、自社商品の強みや競合状況、現地の事情を多角的に分析することが求められるでしょう。

商材と市場が決まったら、価格設定を検討します。越境ECでは輸送コストが高くなるため、価格競争力を維持することが重要です。

2.販売先ごとの文化・商習慣を把握する

越境ECにおいて、文化や商習慣の理解は、顧客との信頼関係を築くための基盤となります。中国ではECにおいてチャットでのコミュニケーションが主流であり、値引き交渉が行われることも珍しくありません。このような文化の違いを理解し、適切に対応することで、顧客の信頼を得られていきます。

また、返品文化も国によって異なります。アメリカでは柔軟な返品対応が求められることが多く、これに応じたサービスを提供することが顧客満足度を高める要因となります。レビュー文化も重要で、SNSを活用したプロモーションが効果的です。

商品パッケージのデザインについても注意しましょう。日本で人気のデザインが、他国では受け入れられないこともあります。文化や商習慣に応じた訴求内容の変更が求められます。

3.販売チャネルの選定・構築

越境ECの主な販売方法は以下の3つにまとめられます。

販売方法 主なプラットフォーム メリット デメリット
海外ECモール活用 Amazon、eBay、Tmall Globalなど 既存の顧客基盤を活用でき、比較的容易に売上を伸ばせる。 出店条件、手数料、競争の激化。
自社越境ECサイト運営 Shopify、WooCommerceなど ブランドイメージを自由に管理でき、顧客データを収集し長期的な資産として活用できる。 サイト構築の手間とコスト、現地の認知度向上と集客戦略が不可欠。
SNS・
マーケットプレイス活用
Facebook、Instagram、WeChat、微博など SNSをプロモーション手段として活用でき、顧客との関係を築ける。特に中国市場ではWeChatや微博が重要。 プラットフォームごとの特性を理解し、効果的な戦略を立てる必要がある。

越境ECでは、購入者が利用しやすい国際的な決済手段を導入することが大切です。PayPalやStripeなどの主要なサービスに加え、特に中国市場をターゲットにする場合は、Alipay(支付宝)やWeChat Payの導入がポイントとなります。

また、販売先国の通貨で取引を行う場合、為替レートの不利な変動によって利益が減少するリスクがあるため、事前の備えが重要です。為替変動リスクや関連する手数料を考慮に入れ、商品の価格設定を適切に行うことで、収益性を確保し、安定した事業運営を目指しましょう。

4.物流・配送の手配やカスタマーサポートの整備

越境ECを成功させるには、配送戦略と顧客サポートも重要です。日本から海外への商品発送は一般的に輸送コストが高くなる傾向にあるため、EMS、DHL、FedExなどの国際配送サービスを比較検討し、コストと利便性のバランスが取れた最適な方法を選びましょう。

さらに、物流コストを削減し、配送時間を短縮する上で非常に効果的なのが、現地倉庫やフルフィルメントサービスの活用です。商品を販売先に近い場所で保管・管理することで、顧客への配送リードタイムを大幅に短縮でき、結果的にコスト削減にもつながります。

また、言語の壁も大きな課題となります。現地の言語に対応できるカスタマーサポート体制を整えることが、顧客からの信頼を得る上で大切です。加えて、顧客が安心して購入できるよう、明確な返品・返金ポリシーを事前に定めておくようにしましょう。

5.プロモーションとマーケティングを実施

越境ECサイトの認知度向上には、SEO対策と広告運用が重要です。単にサイトを多言語化するだけでは不十分で、海外SEOに対応したシステム導入が求められます。

SNSは越境ECにおける強力な集客手段となります。現地の文化や価値観に合わせたブランドイメージを構築し、SNSやインフルエンサーマーケティングを通じて効果的に発信することが、重要です。

越境ECでは、事前の販売計画と現地の文化・商習慣に合わせた訴求内容の変更が成功を左右します。例えば、中国の「独身の日(11.11)」や「ブラックフライデー」など、特定の販売イベントに合わせたキャンペーンを実施することで、顧客の購買意欲を効果的に高めることができます。

6.実際に販売を開始し、データ分析を行う

越境ECを成功させるには、販売データの分析と戦略の柔軟な調整が必要です。データを分析することで、どの国で自社商品が支持されているかを特定し、需要の高い市場に焦点を当てた商品戦略を立てられます。国によって効果的な広告内容は異なるため、データに基づいた検証と調整が求められます。

自社ECサイトを構築している場合は、顧客の購買行動や嗜好に関するデータを直接収集・分析できるため、より精緻なターゲティングによるマーケティング戦略を立案し、商品開発に反映させられます。

データ分析の結果に基づき、売れている商品の特徴を把握し、在庫を増やす、または顧客ニーズに合った商品の開発や改良を進めることが重要です。

越境ECによる海外への市場拡大を視野に入れよう!

越境ECは、日本企業が海外市場へ進出し、売上を拡大するための大きなビジネスチャンスです。しかし、国内ECとは異なり、国際輸送、通関手続き、現地配送手配など、複雑な物流が課題となることも少なくありません。

SBSグループは、アジア、アメリカ、ヨーロッパを含む12カ国に40以上の拠点や営業所を構えるグローバルネットワークを有しています。

このネットワークと、SBSグループが提供する「EC物流お任せくん」を組み合わせることで、国内での商品保管・出荷から、国際輸送、通関、現地配送までを一貫してサポートできます。
「海外に販路を広げたいが、越境ECの始め方がわからない」「物流面で何から手をつけるべきか悩んでいる」といった企業にとって、スムーズな越境EC立ち上げを支援できるパートナーとなります。

越境ECによる海外展開を検討中の方は、ぜひ一度SBSグループにご相談ください。

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