EC物流ブログ

2025.06.06
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物流業界で用いられる物流KPI(物流管理指標)とは?設定手順や活用事例も紹介

企業の目標達成には、業務の効率化が欠かせません。特に物流業務においては、効率的な運営が競争力を高める重要な要素となります。しかし、どのようにして業務の効率を測定し、改善していくのでしょうか。

その大きな役割を果たしてくれるのが「物流KPI(物流管理指標)」です。物流KPIは、企業の物流業務を最適化し、効率的な運営を実現するために重要となります。そこで今回は、物流KPIの主な指標から導入のメリット、導入の手順まで詳しく解説します。

物流業界で用いられる物流KPI(物流管理指標)とは?

一般的にKPIとは、企業や組織の目標を達成するために設定する業績評価するための数値(例:売上高、利益率)のことです。

これに対して物流KPIは、物流業務の効率化、コスト削減、サービス品質の向上を目的とした指標です。具体的には、在庫回転率や配送の正確性など、物流プロセスに特化した数値を用いて評価されます。

例えば、在庫回転率が低い場合には、在庫管理の見直しや仕入れ戦略の再考が必要です。また、配送の正確性が低い場合には、配送ルートの最適化や運送業者との連携強化が求められます。

なお、国土交通省では「KPI導入の手引き」を作成するなど、物流KPIの普及活動を行っています。

*出典:国土交通省「物流事業者におけるKPI導入のあり方に関する検討会」「KPI導入の手引き」(最終版)の公表について

物流KPI(物流管理指標)の主な3つの指標

効率的な運営は、企業の競争力を高めるために重要です。特に物流業界においては、積載率、実車率、人時生産性といった指標は、物流の効率性を評価するための重要な数値となります。これらの指標を理解し、計算方法を把握することで、物流業務の改善に向けた具体的なアクションを考える手助けとなります。ここからは、物流KPIの主な3つの指標について解説します。

コスト・生産性

コストや生産性の評価には、積載率、実車率、人時生産性などの指標が用いられます。これらの指標は、以下の計算式を用いて求められ、KPIとして設定されます。

指標 計算式
保管効率 保管間口数 / 総間口数
人時生産性 処理ケース数 / 投入人時
数量あたり物流コスト 物流コスト / 出荷数量
日次収支 1日あたりの収益 ー 1日あたりのコスト
実車率 実車距離 / 走行距離
実働率 実働日数 / 営業日数
積載率 積載数量 / 積載可能数量

品質・サービスレベル

品質やサービスレベルは、誤出荷率、クレーム発生率、納期遵守率などの指標によって測定されます。これらの指標を定期的にモニタリングすることで、業務の改善点を特定し、顧客満足度の向上につなげることが可能です。

指標 計算式
棚卸差異 棚卸差異 / 棚卸資産数量
遅延・時間指定違反率 遅延・時間指定違反率が起こった件数 / 受注数
誤出荷率 誤出荷が起きた件数 / 受注数
汚破損率 汚破損が起きた件数 / 受注数
クレーム発生率 クレームが入った件数 / 受注数

物流条件・配送条件

配送頻度、納品待機時間、納品付帯作業実施率は、物流プロセスの最適化に向けた重要な指標です。これらの指標を定期的にモニタリングすることで、業務の改善点を特定し、効率的な物流運営を実現することができます。

指標 計算式
出荷ロット 出荷数量や重量のことを指し、顧客や納品先ごとに計測される。この指標を用いることで、輸送や庫内作業の効率化が図れる。
出荷指示遅延件数 納品期日を過ぎてから出荷指示を出した件数を計測する指標。この指標は、輸送遅延を改善するために活用される。
配送頻度 顧客や納品先ごとの配送回数を営業日数で割った数値。この指標を計測することで、配送の効率性を評価し、必要に応じて見直しを行うことができる。
配送頻度=配送回数 / 営業日数
納品先待機時間 納品先に到着した後、実際に納品が完了するまでの待機時間を平均化したもの。この指標は、時間通りに到着しても待機時間が発生している場合に、原因に対して適切な対策が必要であることを示す。
納品付帯作業実施率 納品回数に対してどの程度付帯作業が実施されているかを示す指標。付帯作業には、開梱や棚入れ、検品などが含まれる。この指標を計測することで、契約外作業の発生状況を確認し、契約内容の見直しなどの対策を講じることができる。
納品付帯作業実施率=付帯作業実施回数 / 納品回数

物流KPI(物流管理指標)を設定するメリット

物流KPIを設定することでどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、物流KPIを設定することの具体的なメリットについて解説していきます。

問題点の可視化による業務改善の推進

物流業界では、多数の拠点やプロセスが複雑であるため問題の可視化の難易度が高いことが多いです。可視化ができなければ、どの問題に対して対策を講じるべきかが不明確になります。しかし、現状の業務プロセスを把握し、課題を明確にすることは容易ではありません。そのため、適切な手法を用いて業務を分析することが重要です。

業務プロセスを定量的に評価することで、現状の業務の効率性や問題点を把握できます。例えば、出荷指示遅延件数や納品先待機時間といったKPIを設定し、これらの数値を定期的にモニタリングすることで、業務の現状を把握することが可能です。このプロセスにより、目標の数値との差異を洗い出し、具体的な改善施策を立てることができます。

関係者間の連携強化と効率的なコミュニケーションの実現

物流業務は、荷主や物流事業者、倉庫事業者など、多くの関係者が関与する複雑なプロセスです。あわせて物流事業者の動きだけでは改善できない、荷主依存の問題も多々あります。このような環境では、各関係者が共通の認識を持つことが、業務の効率化や改善において非常に重要です。しかし、漠然とした目標では共通認識が生まれにくく、業務改善の効果も薄れてしまいます。そこで、KPIを用いて業務を可視化することが求められます。

KPIを設定することで、業務の現状を客観的に評価することが可能です。例えば、出荷遅延率や在庫回転率といった具体的な数値を用いることで、各関係者が同じ情報を基に議論を進めることができます。これにより、問題点が明確になり、改善策を立てやすくなります。

合理的で公平な評価とスタッフのモチベーション向上

KPIは、業務の成果を客観的な数値で示すため、評価の公平性という観点から非常に有効です。例えば、「月間売上を10%増加させる」という具体的なKPIを設定した場合、その達成度は明確な数値で示されます。このように、主観的な評価が排除されることで、評価する側も判断がしやすくなるでしょう。

KPIが明確であれば、従業員はその目標にコミットしやすくなります。目標への貢献度が評価につながるため、不明瞭な査定や評価の偏りをなくし、職場の不満を減少させる効果が期待できます。

このように、KPIの導入は企業全体のパフォーマンス向上に寄与し、従業員のモチベーションを高める重要な要素です。

物流KPI(物流管理指標)を設定する際の手順

物流業務を改善するには、現状の把握と明確な目標設定が欠かせません。そのために活用されるのが「物流KPI」です。ここでは、物流KPIを設定する具体的な手順を紹介します。

現状のデータ収集と課題の可視化

企業の成長や効率化を図るためには、業務プロセスの現状を正確に把握することが不可欠です。正確な情報を得ることで、経営陣やマネージャーは、どの部分が効果的であるか、または改善が必要かを特定できます。例えば、顧客からのフィードバックを分析することで、製品やサービスの改善点を見つけ出すことが可能です。このように、データに基づく意思決定は、企業の競争力を高めるために非常に重要です。

さらに、課題の可視化は具体的な問題の発見につながります。業務プロセスの中でどの部分に問題があるのかを明確にすることで、効果的な対策を講じることができるようになります。これにより、企業は迅速に対応し、効率的な倉庫運営ができるでしょう。

目標設定と戦略立案

現状が明確になったら、次は目標の設定に移ります。この際、SMART基準を適用することが重要です。SMARTとは、以下の5つの要素を指します。

  • ・Specific(具体的):目標は明確で具体的にする。
  • ・Measurable(測定可能):進捗を測定できる指標を設定する。
  • ・Achievable(達成可能):現実的に達成可能な目標を設定する。
  • ・Relevant(関連性):企業のビジョンや戦略に関連した目標であること。
  • ・Time-bound(期限がある):目標達成の期限を明確にする。

経営者と現場の従業員の間には、しばしば認識のズレが生じることがあります。このズレを解消するためには、目標設定プロセスに従業員や関係者を参加させることが効果的です。彼らの視点を取り入れることで、より広範な視点からの目標設定が可能になり、認識のズレを減少させることができます。これにより、全体の目標に対する理解とコミットメントが高まり、業務の効率化や改善が促進されるでしょう。

社内のルール策定と周知徹底

KPIを正しく運用するためには、測定ルールやマニュアルを整備し、全スタッフに浸透させることが不可欠です。まず、社内ルールを策定し、全従業員に周知することから始めましょう。KPIの意義や目的を理解してもらうことで、従業員は自らの業務がどのように全体の成果に寄与するのかを認識しやすくなります。すべての従業員が同じ基準や手順に従うことができるため、業務の一貫性が保たれます。

また、業務プロセスの標準化にはマニュアルの整備が重要です。整備されたマニュアルを用いることで、新入社員や異動したスタッフに対して、効率的に教育が行えます。

このように、全スタッフが同じ基準で業務を遂行できる環境を整えることが、企業全体のパフォーマンス向上につながります。

PDCAサイクルによる継続的な改善

KPIに取り組んだ後は、必ず評価を行い、改善施策を立てて実行に移すことが重要です。PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を実施することで、全社員がプロセス改善に参加しやすくなるでしょう。その結果、業務に対する意識が高まり、業務改善への関心も向上します。定期的に結果を確認することで、問題や課題の発見につながり、効率的な運営や改善を進めることができるでしょう。

さらに、自分の意見や行動が成果に結びつくことを実感できると、社員は「自分にもできる」と感じるようになります。全社員がこのプロセスに参加し、自己効力感を高めることで、企業全体の成長を促進することができます。

物流KPI(物流管理指標)を設定する際に押さえておくべきポイント

ここでは、物流KPIを設定する際に押さえておくべきポイントを解説します。これらのポイントを考慮することで、効果的な物流KPIを設定し、物流効率の向上や企業の目標達成に貢献することができます。

具体的かつ測定可能な指標を設定する

KPIを設定する際には、曖昧な目標ではなく、具体的かつ測定可能な指標を設定することが非常に重要です。具体的な数値目標を持つことで、問題点を特定しやすくなり、適切な改善策を講じることが可能になります。

例えば、「配送遅延率」をKPIとして設定し、目標を「月間5%以下」とした場合、実際に遅延が発生した際には、その原因を分析し、改善策を講じることができます。このように、具体的な指標を設定することは、業務にどのように影響を与えるかを理解するためにも重要です。

具体的かつ測定可能な指標を設定することは、業務の効率化や改善に向けた第一歩となります。明確な目標を持つことで、チーム全体が同じ方向に向かって努力しやすくなり、結果として業務の質を向上させることができます。

現状と目標の差異を可視化する仕組みを構築する

KPIを設定する際には、現状の数値だけでなく、目標との差異を明確にすることが非常に重要です。例えば、配送遅延率の目標が「5%以下」である場合、実際の遅延率が「8%」であれば、差異は「3%」となります。この差異を把握することで、どの部分を改善すべきかが明確になり、具体的なアクションを取ることが可能になります。

また、KPIの管理を効率化するために、管理システムを導入することも効果的です。デジタルツールを活用することで、リアルタイムでデータを追跡し、進捗を可視化することができます。これにより、迅速な意思決定が可能となり、業務の改善が促進されます。

明確な目標設定、そして適切な管理システムの導入を通じて、物流業務の効率化を図りましょう。

現場の実態に即したKPIを設定し、現実的に達成可能な目標を立てる

KPIを設定する際には、理想的な数値を追求するだけでなく、現場の実態を正確に把握することが非常に重要です。高すぎる目標を設定すると、従業員のモチベーション低下や、業務負担が増大する可能性があります。

例えば、現場の実態を無視して「月間配送件数を50%増加させる」という目標を設定した場合、従業員は達成不可能な目標に重圧を感じ、結果的に業務の効率が低下してしまうでしょう。

一方で、低すぎる目標設定も問題です。低い目標を設定すると、従業員は自分たちの限界を引き下げてしまい、長期的には全体のパフォーマンスを低下させ、競争力を失う要因となります。

このように、KPIの設定にはバランスが重要です。理想的なKPIは、現場の実態を反映しつつ、挑戦的でありながらも達成可能な範囲に設定することが求められます。

物流KPI(物流管理指標)の活用事例

物流KPIは、企業の物流プロセスを最適化し、効率的な運営を実現するための重要な指標です。物流KPIを活用することで、業務の効率化やコスト削減、顧客満足度の向上が実現できます。ここでは、KPIの活用事例をいくつか紹介します。

ECの工程別生産性の把握による人的配置の調整

EC業務においては、人的配置が収益に直結するため、各工程の生産性を正確に把握することが不可欠です。KPIを活用することで、人的配置や生産性向上に向けた効果的な施策を実施できるようになります。

ある企業では、自社で開発した生産性分析ソフトを活用し、各作業別の生産性を計測した結果、曜日によって業務量に差が出ることが明らかになりました。この分析を基に、必要人員の割り出しと作業進捗管理の徹底、多能工化の取り組みを行い、改善余地時間を15%削減し、生産性を1.3倍に改善することに成功しました。

このように、KPIを用いた可視化と分析によって人的配置の最適化が図られ、業務の効率化だけでなく、収益の向上にもつながることが期待されます。

誤出荷率の低減による顧客満足度の向上

出荷業務において、誤出荷は企業の信頼性を損なう大きな要因です。顧客満足度を維持するためには、出荷ミスを減少させることが不可欠です。

ある企業では、誤出荷の発生率が高く、顧客からのクレームが増加していました。この問題を解決するためには、これまでの作業方法を見直し、誤りが起こりにくい環境を整える必要があったため、出荷ミスをKPIとして設定し、以下の改善施策を講じることにしました。

  • ・誤出荷が発生した際の対応
  • ・作業マニュアルの見直し
  • ・倉庫内の環境整備

これらの施策を実施した結果、誤出荷や棚卸誤差の改善が見られました。この成果は、KPIを用いた管理と具体的な改善施策の実施が功を奏した結果です。

荷主との認識共有や共通課題化によって販促予定と連動した波動を対応

セールや販促キャンペーン、季節変動による出荷量の急激な出荷量の急激な変動(波動)は、物流現場に大きな負荷をもたらします。この課題を解決するためには、荷主との密な連携、情報共有が必要です。販売計画や販促予定といった情報を共有し、双方の認識を一致させることで、余裕を持って準備ができ、変動に耐えられる体制を構築できるでしょう。

また、過去の販売/出荷実績や、市場動向などを分析し、波動の時期や規模を予測することも重要です。予測精度が向上するため、効率的な物流計画を立てることができ、在庫回転率や欠品率をKPIとすることで物流現場の最適化や販売機会損失を防ぐ効果ももたらしてくれます。

このように、物流KPIを共有し、協力して改善に取り組むことで、情報の共有と協力を通じて物流の負荷を軽減し、スムーズな出荷を実現することが重要です。

物流KPI(物流管理指標)を設定し業務改善を図ろう!

物流KPIの設定と活用は、企業の物流プロセスを最適化し、効率的な運営を実現するための重要な手段です。具体的な目標を設定し、定期的に評価・改善を行うことで、業務の効率化やコスト削減、顧客満足度の向上を図ることができます。

KPIの管理を効率化するためには、デジタルツールの活用も検討するとよいでしょう。SBSグループの「EC物流お任せくん」では荷主も物流の各指標をリアルタイムに確認できるシステムを用意しており、各指標を共有認識を持ちながら継続的に課題解決をしていくことができます。

物流KPIを効果的に設定し、具体的な指標を持ち、定期的に評価を行うことで、持続的な成長を実現しましょう。