3PL(サードパーティー・ロジスティクス)は、物流業界においてコスト削減や業務効率化を実現する重要な戦略として注目を集めています。企業が競争力を維持しながら持続的な成長を遂げるには、自社に最適な3PLパートナーの選択が重要です。
そこで今回は、3PLの基本概念から具体的なメリット・デメリット、さらには日本の主要3PL企業の特徴や選定ポイントまで、包括的に解説します。アセット型・ノンアセット型の違いや、自社の物流戦略を最適化するための情報をお届けします。
3PLとは?
3PLとは、サードパーティーロジスティクスの略称です。これは、企業が自社で行っている物流業務を専門事業者に委託し、代わりに実施してもらうことを指します。
物流業務を外部委託することで、コスト削減、業務効率化、専門性の向上などの効果が期待できる戦略的なアウトソーシングの手法です。企業は自社の経営資源をコア業務に集中できるようになり、物流面での競争力強化が図れます。
3PLと物流業の違い
3PLは、物流戦略の立案から実行まで包括的に担当する業務形態です。一般的な物流業者と異なり、3PL企業は物流全般を扱い、効率的な戦略や物流システムを提案します。
1PL(自社物流)や2PL(部分的外部委託)と比べ、3PLはより戦略的なアプローチを取ります。3PLは、単なる商品の輸送や保管にとどまらず、物流システムの最適化やコスト削減、在庫管理の効率化など、企業の物流全体を戦略的にサポートする点が特徴です。
3PLと4PLの違い
4PL(フォースパーティーロジスティクス)は、3PLの一形態で、戦略策定段階から支援を行う物流コンサルタントの役割を含めた概念となります。
あえて4PLを掲げることはロジスティクス戦略の立案や企画推進を含め、サプライチェーン全体を視野に入れた戦略的アプローチが提供可能であることを、明確に打ち出していると言えるでしょう。
3PLは「アセット型」と「ノンアセット型」の2種類
3PLサービスには、「アセット型」と「ノンアセット型」という2つの形態があります。両者にはそれぞれ長所と短所があり、荷主企業のニーズや事業規模、取扱商品の特性などに応じて適切な形態を選択することが重要です。
アセット型
アセット型の3PL企業とは、自社で物流資産(アセット)を保有し、運営を行う企業のことです。具体的には、倉庫や物流センター、輸送に使用する車両、さらには物流管理システムといった設備を自社で所有しています。
アセット型の3PL企業は、自社の資産を活用してサービスを提供するため、荷主の要望に応じて確実性をもって対応できる点が大きなメリットです。また間接コストがノンアセット型にくらべてかからないため、費用も抑えられる傾向にあります。
日本の3PL市場ではこの「アセット型」が主流となっており、多くの物流企業がこの形態でサービスを展開しています。
ノンアセット型
ノンアセット型の3PL企業は、自社で物流資産(アセット)を保有せずに事業を展開する企業のことです。
具体的には、製品の保管は専門の倉庫業者に委託し、輸送は運送業者と提携して行います。このように、ノンアセット型の3PL企業は複数の企業と連携しながら物流業務全体を管理します。
ノンアセット型のメリットは、荷量の変動に柔軟に対応できることです。繁忙期には追加のリソースを確保しやすく、閑散期にはコストを抑えることができます。
また、顧客のニーズに応じて最適な倉庫や輸送手段を選択できるため、カスタマイズされたサービスの提供も可能です。
しかしながら、物流業界全体のリソース不足が発生した際は逆に手配が困難となるリスクもあります。
3PLのメリット4選
3PLを導入するメリットはいくつかありますが、主なメリットは以下のとおりです。
- ・物流コストを削減できる可能性がある
- ・物流サービスの品質や顧客満足度の向上につながる
- ・新規市場への参入ができる
- ・高度な物流戦略を立案できる
それぞれのメリットについて解説します。
物流コストを削減できる可能性がある
3PLの主要なメリットは物流コストの大幅削減です。3PL企業は、複数の顧客の物流をまとめて管理するため、規模の大きさを活かしてコストを削減できる可能性があります。具体的には、倉庫を複数の顧客で共有したり、トラックなどの輸送手段を混載とし、荷物の積載率を上げたりすることで、コストの無駄を減らします。また、物流設備や機器を複数の顧客で共同利用することで、自社で設備を持つよりもコストを大幅に削減できます。
さらに、固定費の変動費化により、繁忙期や閑散期に応じた物流体制の増減もある程度可能です。自社での設備投資や人員雇用が不要となり、初期投資や固定費を抑制できるほか、物流量に応じた適切なコスト管理が実現します。
これにより、効率的で経済的な物流体制の構築が可能です。
物流サービスの品質や顧客満足度の向上につながる
3PL企業は物流専門業者として最新技術と効率的な業務プロセスを導入しています。また、在庫の正確性向上やリアルタイムの荷物追跡等も可能となりました。これにより、顧客問い合わせへの迅速・正確な対応ができ、満足度の向上につながっています。
また、3PL企業の広範な物流ネットワークを活用することで、スピーディーで正確な配送の実現が期待できます。効率的な配送ルート設計や需要変動への柔軟な対応により、配送時間短縮と精度向上が図られます。
これらの取り組みにより、顧客期待に応える高品質サービスの提供が可能となるのです。
新規市場への参入ができる
例えば企業が新たな国や地域などでのビジネス展開を検討する際、3PL企業の豊富な物流ノウハウとネットワークは大きな支えとなります。自社で開拓することなく、企業は新たな国や地域などでの物流インフラを手に入れることができ、販売チャネルの開拓がスムーズになります。
ネットワークを共同利用することで、個別企業では難しい効率的な物流オペレーションが可能となり、コスト面でも有利に販路拡大を進めることができます。新規市場での供給体制は大きな参入障壁となりますので、3PLパートナーのカバー範囲が大きくビジネスの優位性に影響するでしょう。
高度な物流戦略を立案できる
近年では、物流担当役員を配置するなど、企業における物流戦略の重要性が一層高まっています。3PLを利用することで単に物流業務の委託により、自社でトラックや倉庫などの物流設備を保有・管理する必要がなくなるだけでなく、物流戦略部分への注力が可能となるでしょう。3PL企業との提携を通じて、パートナーと物流戦略を共同で立案でき、より高度な戦略的な取り組みを行えます。経営資源の投下における選択と集中により、各部門の専門性を高めて競争力を強化することが可能です。
3PLのデメリット
3PLの導入には、さまざまなメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
主なデメリットは以下のとおりです。
- ・サービスの柔軟性の低下
- ・自社にノウハウが蓄積されない
- ・緊急時の対応が遅くなる
これらのデメリットについて、解説していきます。
サービスの柔軟性の低下
コストや品質といった3PLの恩恵を受けることは、3PL事業者のサービスやオペレーションの標準化がもたらすデメリット部分も同時に受け入れることになります。
自社内での物流であれば柔軟に対応できるケースでも、3PL業者を介すと標準化されたサービスやプロセスに縛られることがあり、迅速なカスタマイズが難しくなる場合があります。
情報の共有や連携の困難さ
3PLを導入すると、自社で物流を管理している場合よりも意思疎通に齟齬が生じる可能性が高まります。特にITシステムの連携がうまく行かない場合、リアルタイムでの情報取得が難しくなることもあり、その結果、対応の遅れやトラブルの長期化が発生する可能性があります。
また、3PL企業は外部の企業であるため、企業文化も業界も異なります。そのため、日常的なコミュニケーション方法の工夫や定期的な情報交換が不可欠です。
依存度の高さによるリスク
企業が3PLを活用すると、物流の効率化が図れる一方で、外部に依存するリスクも生じます。最悪の場合、3PL会社の倒産やトラブルなどの外的要因により、事業が継続できなくなる可能性もあります。そのため予め、事業継続性に対するリスクの洗い出しと対応方法の整理や、万が一の発生時に企業を守るための契約条項の設定に気を配る必要があります。
契約に盛り込んでおきたい事項の例
- ・業務範囲と責任分担の明確化
- ・サービスレベル指標(KPI)の設定
3PLの代表企業における売上高ランキング
日本には多くの物流企業が存在し、3PLの分野でもさまざまな企業プレイヤーがいます。例えば、以下の企業などが、3PL市場において、多くのシェアを持っています。
- ・日本通運株式会社
- ・ヤマトホールディングス株式会社
- ・SBSホールディングス株式会社
- ・佐川急便株式会社
- ・ロジスティード株式会社(旧日立物流)
また、センコーグループホールディングス株式会社やセイノーホールディングス株式会社、山九株式会社、株式会社丸和運輸機関(AZ-COM丸和ホールディングス)、株式会社ハマキョウレックスといった企業も業界をリードしています。
これらの企業は、それぞれ異なる強みや特徴を持っており、3PL企業を選定する際には各社のサービス内容や実績を比較することが重要です。
おすすめの3PL企業7選
自社に合う3PLの企業を選ぶには、各企業の特徴を押さえ、比較検討することが大切です。
ここでは、以下の3PL企業7社を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
- ・SBSホールディングス株式会社
- ・センコー株式会社
- ・凸版物流株式会社
- ・ロジスティード株式会社
- ・日本通運株式会社
- ・ヤマトホールディングス株式会社
- ・富士物流株式会社
SBSホールディングス株式会社
SBSホールディングス株式会社は「For Your Dreams」というブランドメッセージのもと、総合的な物流ソリューションを提供しています。
SBSホールディングス株式会社の強みは以下のとおりです。
- ・生産系や販売系の各専門業界におけるBtoB物流のノウハウ
- ・大規模物流拠点の開発・運用能力
- ・ITとロジスティクステクノロジーへの積極的な投資と研究開発
- ・自社のラストワンマイル配送網の構築
これらの強みを組み合わせることで、SBSグループはスタートアップから大規模荷主まで、さまざまな企業の物流ニーズに対応しています。顧客企業の物流戦略の実現と改善にも貢献し、ワンストップでの最適な物流ソリューションを提供しています。
センコー株式会社
センコー株式会社は、長年にわたり培ってきた独自のノウハウを活用し、顧客企業のサプライチェーン構築と運営を3PLサービスを通じて包括的にサポートしています。
センコー株式会社の3PLサービスは、単なる物流業務の受託にとどまらず顧客企業のビジネスニーズに最適な事業会社の選定まで含めた総合的なアプローチを採用しています。
これにより、顧客企業が本業に集中できる環境を整え、最適なロジスティクスソリューションの提供を目指しています。
凸版物流株式会社
凸版物流株式会社は、1988年にトッパングループの物流業務を担う目的で設立された企業です。日本全国に拠点を持ち、綿密に計画されたネットワークを構築・運営しています。
ABC管理(Activity Based Costing)を活用することで、物流サービスの「見える化」を推進し、効率的で最適なサービスを提案・提供していることが特徴です。
また、トッパングループの情報管理ノウハウを活かした高品質なEC対応型の物流サービスも展開しています。トッパングループの総合品質保証体制のもと、輸送の安全性と品質管理を徹底し、顧客満足度の高い物流サービスの継続的な提供を目指しています。
ロジスティード株式会社
ロジスティード株式会社は、3PL業界の先駆者として豊富な実績を持つ企業です。お客様のサプライチェーンのさまざまなステージにおける物流業務を包括的にアウトソーシングし、サービス水準と物流効率の向上を実現しています。
お客様のニーズに合わせた最適な物流ソリューションを提供しており、豊富な実績に基づく提案力、グローバルな運営力、先進のIT・技術力が特徴です。
また、共同物流サービスや輸送サービスなども展開しており、お客様の物流課題を包括的に解決しています。
日本通運株式会社
日本通運は、豊富なアセットやノウハウを有する総合物流企業として、高度な3PLサービスを提供しています。自社の保有する倉庫や配送ネットワークで培ったノウハウを活かし、お客様のニーズに柔軟に対応し、最適なロジスティクス環境を構築します。
国内最大規模の倉庫面積、多彩な輸送モード、自社開発の情報システム、グローバルネットワークなどが特徴です。日本通運の3PL事業は、アセット型とノンアセット型の両方のサービスをワンストップで提供しており、お客様のニーズに合わせた最適なロジスティクスソリューションを提案しています。
ヤマトホールディングス株式会社(Sustainable Shared Transport)
ヤマトホールディングス株式会社のヤマト運輸は、宅配便サービスで有名ですが、企業向けに物流ソリューションを提供する「ヤマトグループの3PLサービス」も展開しています。また、2024年5月21日に新会社「Sustainable Shared Transport(SST)」を設立し、物流業界の効率化と持続可能性を目指しています。
SSTは荷主企業と物流事業者の情報をつなぐためのオープンプラットフォームを開発中です。このプラットフォームを通じて、地域内での共同輸配送、標準パレットやセミトレーラーの活用により高効率な輸配送サービスを提供し、環境負荷の軽減を図ります。
SSTは2025年度末までに、1日80線便、省人化率65.1%、温室効果ガス排出量42.2%削減を目指しています。
参考:Sustainable Shared Transport公式サイト
富士物流株式会社
富士物流株式会社は、長年培ってきた物流ノウハウを活かし、3PLサービスを提供しています。
富士物流株式会社の3PLサービスは、保管、輸送、流通加工、在庫管理など、物流に関わる幅広いサービスを一貫して提供する包括的なソリューションが特徴です。とくに医薬品、化学品、精密機器などの分野で強みを持ち、これらの業界に特化した専門的なサービスを展開しています。
また、ISO9001やISO14001などの国際規格に基づいた品質管理システムも導入しており、高品質な物流サービスの提供を保証しています。
物流業務の改善のために3PLの活用を検討しよう
3PLの導入により、コスト削減や業務効率化が期待されますが、外部3PLへの依存度が深まるといったデメリットも存在します。
3PLの効果を最大化するには、導入のメリットとデメリットを慎重に検討し、自社の状況と目標を分析することが重要です。適切な3PL企業との協業は、物流課題の解決にとどまらず、ビジネス全体の成長と競争力強化につながる可能性があります。
また、SBSグループでは、「EC物流お任せくん」というEC事業に特化したフルフィルメントサービスも提供しています。物流課題を解決し、ビジネス成長を支援するために、3PLの活用を検討してみてはいかがでしょうか。