「物流の2024年問題」に直面するなか、物流業務の効率化を模索している事業者の方々も多いのではないでしょうか。
この記事では、物流業界で効率化が求められる背景や、政府が推進している「物流総合効率化法」を解説します。
また、物流業務で効率化を進める主な目的、物流業務を効率化する具体的な方法についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
なぜ効率化が必要なのか?物流業界で抜本的な効率化が求められる背景
物流業界には、次のような問題が発生しており、その解決のために効率化が求められています。次項で詳しくみていきましょう。
- ・ドライバーの高齢化と人材不足
- ・EC市場拡大に伴う荷物の個数が増加
- ・積載率の低下と再配達の増加
ドライバーの高齢化と人材不足
全産業と道路貨物運送業の年齢構成
全産業 | トラックドライバー | |
---|---|---|
29歳以下 | 16.6% | 10.1% |
40歳以上・54歳以下 | 34.7% | 45.2% |
65歳以上 | 13.7% | 9.5% |
国土交通省が2023年に発表した「最近の物流政策の動向について」によると、トラックドライバーの年齢構成は全産業平均に比べ若年層と高齢層の割合が低く、中年層の割合が高い傾向にあります。
若年層の割合が低いのは、拘束時間が長く激務というイメージの強い物流業界が敬遠されていることが一因とされています。同様に、体力的な問題から高齢者層も少ないと考えられます。
今後、多くの中高年ドライバーが定年になり退職を迎えるため、トラックドライバーの人材不足はさらに深刻化するといわれています。
EC市場拡大に伴う荷物の個数が増加
物流業界では、貨物一件あたりの貨物量は直近20年で半減する一方、物流件数はほぼ倍増しています。物流の小口多頻度化が急速に進行している背景には、EC市場の拡大があります。
2022年、日本におけるEC市場規模は約22.7兆円に昇り、物販分野におけるEC化率は9.13%に達しました。
しかし、EC市場は小口貨物を多数の消費者に運ぶBtoC物流です。BtoC物流は、大口配送が主となるBtoB物流よりも、配送効率が悪い一方で業務負担は大きくなりがちです。
また、大手ECサイトでは、一日あたりの取り扱い件数が数百件から数千件になる可能性もあり、出荷作業の負担増が懸念されます。
積載率の低下と再配達の増加
BtoC物流では、配送の多寡にかかわらず一定のサービス提供が求められます。そのため、結果的に積載効率も悪くなる傾向にあります。
また、受取主の不在による再配達も多いことから、通販の利便性が向上し、荷量が増えるほど配送業者への負担は増え続けることになるでしょう。
一方で、昨今は置き配や宅配ロッカーの設置など、受取主が不在でも配達を終える仕組みが整備され始めています。このため、こうした変化に対応できる物流システムの導入やシステム連携構築が求められるといえます。
政府が推進している「物流総合効率化法」とは?
物流総合効率化法とは、流通業務の総合化・効率化を図り、環境負荷の低減・省力化に役立つ事業に対する認定や支援を行うための法律のことです。
ここからは、以下の3つを軸にそれぞれ詳しく解説します。
- ・物流総合効率化法の概要
- ・物流総合効率化法の認定を受けるメリット
- ・物流総合効率化法の認定を受けるまでの流れ
物流総合効率化法の概要
物流総合効率化法は、物流業務の効率化を目指す企業を支援し、税制特例や経費補助、物流拠点の開発許可の配慮などを行うための法律です。
- ・輸送網の集約
- ・輸配送の共同化
- ・モーダルシフト
などを推進する事業者は、認定を受けることで税制面での優遇措置を受けられます。
物流総合効率化法の認定を受けるメリット
物流総合効率化法の認定を受けるメリットとして、主に以下の4つがあげられます。
- ・輸送連携型倉庫の法人税や固定資産税・都市計画税の減免制度
- ・市街化調整区域に物流施設を建設する場合の開発許可に関する配慮
- ・認定事業の計画策定経費や運行経費などの補助
- ・長期低金利貸付、事業実施資金の貸付
税額軽減や経費補助などを活用しながら、事業を行えるという点が大きなメリットです。
物流総合効率化法の認定を受けるまでの流れ
物流総合効率化法の認定を受けるまでの流れは、以下のとおりです。
- 1.運輸局の物流担当窓口に相談
- 2.条件確認や助言を受け、認定対象かつ支援見込みがあるかを判断
- 3.(認定・支援見込みがある場合)具体的な事業計画の作成
- 4.認定基準の適合性を再確認し、認定の正式申請
- 5.説明聴取、必要書類の審査、必要に応じた補正指導
- 6.審査通過、認定
また、認定条件は、全て達成する必要があります。
- ・基本方針に照らして適切であること
- ・流通業務総合効率化事業を確実に遂行できるものであること
- ・各事業法が定める欠格事由に該当せず、許可・登録基準などに適合すること
特定流通業務施設を整備する場合には、上記に加えて「主務省令で定める基準に適合すること」も必要です。
物流業務で効率化を進める主な目的
物流業務で効率化を進める主な目的として、以下の3つがあります。ここでは、それぞれの課題や達成するために必要なことを確認していきましょう。
- ・省人化や負担軽減
- ・コストの削減
- ・サービスレベルの維持向上
省人化や負担軽減
繰り返しになりますが、物流業界では慢性的なトラックドライバー不足に加え、EC市場の拡大による物流の小口多頻度化が進んでいます。
したがって、ピッキングや在庫管理など物流業務の一部を自動化・機械化することで省人化が図られ、限られたリソースを有効活用できます。
また、働く人にとっても負担の軽減につながります。
コストの削減
物流業務を効率化できれば、結果的にコストダウンにつながります。
人件費や為替、原材料費の高騰による影響を受ける物流業務をコストアップしにくい構造にしていくことが、物流の効率化であるといえます。
そのために、EC市場の拡大を踏まえた物流プロセスへの見直しや、テクノロジーを活用し、そもそも人に依存し過ぎない構造に変えていくことが必要です。
サービスレベルの維持向上
ムダなものを排除し効率化する代わりに、クオリティやサービスに資源を投下できれば、物流の品質・サービスレベルの維持向上につながります。
また、国内の人口減を踏まえると、配送のリードタイムなど、これからもサービスレベルを維持・向上していくためには、効率的な運用に切り替えないと立ち行かない状況にあることも、物流業務で効率化を進める大切な目的の一つです。
物流業務を効率化する具体的な方法
物流業務を効率化する具体的な方法には、主に以下の5つがあります。
- ・物流倉庫を自動化する
- ・共同配送に取り組む
- ・現場の労働環境の改善を図る
- ・適切な物流システムを導入する
- ・物流業務をアウトソーシングする
物流倉庫を自動化する
立体自動倉庫システム |
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デジタルアソートシステム(DAS) |
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デジタルピッキングシステム(DPS) |
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自動搬送ロボット |
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倉庫管理システム(WMS) |
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物流倉庫の自動化に活用できるシステムには、上記のようなものがあります。
物流倉庫の自動化は、システムや機械の導入にコストがかかる半面、商品の入庫から保管、出庫に至るまでの作業を効率化できます。
共同配送に取り組む
共同配送における注意点
配送パートナーの選定時 |
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配送システムの構築時 |
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配送契約の締結時 |
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共同配送とは、複数の事業者(卸業者やメーカーなど)が同じ配送先への荷物を共同で配送する仕組みのことです。
トラックの積載効率向上や稼働率の向上、配送コスト削減などのメリットがある一方で、共同配送を行う場合には上記の点に注意が必要です。
現場の労働環境の改善を図る
現場環境の改善を図る方法として、労働者の作業をサポートするロボットや、アシストをするツールの導入があげられます。
例えば、ピッキングや仕分けをサポートするロボットなどです。
人とは違い、ロボットであれば労働時間に関係なく、夜間も含めて動かすことができます。
適切な物流システムを導入する
物流システムには、倉庫内管理(WMS)や配送管理(TMS)といった物流業務を管理するソフトウェアがあります。物流の工程別の課題に対して、必要なシステムを導入しましょう。
例えば、ロケーション管理機能を備えた在庫管理システムを導入することで、検索を含む商品状況をリアルタイムで把握でき、在庫の過不足や滞留を防ぎやすくなります。
また、地図情報と実走行データに基づき、最適な配送ルートを自動生成するシステムを導入すれば、配車やラストワンマイル配送における時間やコストの削減につながるでしょう。
物流業務をアウトソーシングする
物流業務をアウトソーシングすることで、それまで物流にかけていたリソースやコストをコア業務に集中させられるほか、以下のようなメリットもあります。
- ・コスト削減
- ・人的リソースの確保
- ・物流業務の品質向上
- ・物流業務における体制変化への対応が不要
- ・ニーズに適したサービスの提供が可能
先進的な仕組みを取り入れた物流最適化システムを導入し物流業務の効率化を図ろう!
慢性的かつ深刻な人材不足が続く物流業界では、EC市場の拡大による業務負担急増を受けて、自動化や省人化といった業務効率化が急務となっています。
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