近年、物流業界に変革をもたらす取り組みとして、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まっています。
しかし、物流DXの具体的なメリットや方法が分からず、なかなか導入が進まないという方が多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、物流業界が抱える課題や物流DXの定義、導入時のポイントを解説します。また、物流DXの活用事例についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
物流業界が抱える課題
物流業界が抱える課題として、主に以下の4つがあげられます。
- ・人手不足
- ・小口配送の増加
- ・低賃金・長時間労働という労働条件
- ・IT化の遅れ
人手不足
2022年に経済産業省が発表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、トラックドライバーが「不足」または「やや不足」していると答えた企業の割合は全体の54%に及びます。
さらに、2024年に施行予定の「働き方改革関連法」により、ドライバーの年間時間外労働時間の上限が960時間に設定されることから、物流業界の人手不足が深刻化すると予想されています。いわゆる2024年問題です。
ドライバーの時間外労働時間が制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、長距離運送に影響が出ると懸念されています。一方、ドライバーにとっても稼働時間短縮で給与が減る可能性があるため、離職者が増加するかもしれません。
ドライバーの労働環境の改善につながる法案ではあるものの、物流業界全体のさらなる人手不足を招くおそれがあるといえます。
小口配送の増加
ECサイトの普及に伴う小口配送の増加も課題の一つです。企業や店舗商品を運ぶ大口配送と比較すると、個人宅まで商品を運ぶ小口配送は輸送効率に影響を及ぼします。
スマートフォンやパソコンの普及により、誰もが気軽にECサイトで商品を購入できるようになり、物流業界全体の配送量は大きく増加しました。
しかし、再配達が多く配送ルートも複雑な小口配送が増えたことで、多くの配送業者や物流業者の負担が増えるケースが少なくありません。
低賃金・長時間労働という労働条件
前述のとおり、物流業界では小口配送の増加によって、少ない荷物を高頻度で輸配送している状態が続いています。
しかしながら、業界の慣習、価格競争、取引の多重構造などを踏まえて価格転嫁が遅れています。
その結果、全産業比でドライバーの労働時間は2割近く長く、収入は約1割低いという状況が続いています。
低賃金と長時間労働は、物流業界の課題の一つである人手不足を加速させる要因であるため、抜本的な解決が求められています。
IT化の遅れ
物流業界においては、倉庫や配送など現場領域が多く、IT化が遅れている企業が少なくありません。
IT化の遅れは効率化につながらず、改善が図りにくいままとなってします。
そこで例えば、物流に関する多数のトランザクションデータを分析し、部門間で共有できれば、業務効率向上や業務負荷軽減につながることも多いでしょう。
情報を生かす環境整備が進まないと、さまざまな課題解決も難しいといえます。
物流業界の課題解決に重要な物流DXとは?
国土交通省は、2021年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)」において、物流DXとは「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義しています。
物流システムの規格化などを通じ、物流産業のビジネスモデルそのものを革新すると掲げ、既存のオペレーション改善・働き方改革の実現を目指すとしています。
労働力不足が特に顕著な物流業界において、機械化や自動化による省人化は課題解決のために欠かせない要素です。
国際的な競争力を付けるためにも物流DXの推進、そして、どのような物流DXを推し進めるべきかの判断も求められます。
物流DXによって解決できる課題とは?
物流DXによって解決できる課題として、以下の3つがあげられます。
- ・倉庫内の省人化
- ・再配達などの社会課題の解決
- ・省スペース化
倉庫内の省人化
従来人力で行ってきた業務を自動化・無人化することで、人手不足や賃金の上昇に影響を受けず、物流業務の最適化を目指すことが可能です。
ピッキングや入荷仕分け、出荷梱包、庫内の搬送など工程別にロボットやマテハンを導入できれば、倉庫内の人員を大幅に削減できます。
これにより管理者は、如何にロボットの能力を引き出すよう運用をするのかや、作業人員の配置を時間ごとに組み替えるなど、庫内最適の業務に集中できるでしょう。
倉庫の拠点が大規模化したり、住居の少ないエリアに建設されたりするケースもあるなか、人員確保が事業継続への影響度を増していくことは明らかです。
人的依存度の高い倉庫内作業を如何にDX化するかは、避けられない課題となっています。
再配達などの社会課題の解決
物流DXにより、一件の配達先に対し一度で配達が完了する仕組みづくりができれば、再配達などの課題解決につながります。
例えば、デジタル技術を駆使して、置き配を選べるようにしたり、自宅以外の場所で受け取る方法を選択したりできるシステムを構築するのも一つの方法です。
あるいは、顧客から得られる情報を起点に、物流を最適化するデマンドチェーンを取り入れる方法もあるでしょう。
デマンドチェーンの導入によって、消費者の多様なニーズを把握できれば、商品の過不足解消、在庫拠点の圧縮などの最適化を図れます。
省スペース化
ロボットを使って商品を効率良く保管できれば、庫内の省スペース化が可能です。
人の手によるピッキングを想定しないで済むロボットの保管は、人の導線を考慮した通路や高さなどを気にせずに保管できるという特性があるためデッドスペースを削減でき、保管コスト削減にもつながります。
ただし、保管効率を高めるには、商品の種類や大きさ、出荷特性などを考慮したロボットの選定と保管方法が求められます。
闇雲に導入するには導入コストが高額かつ、特性にそぐわず機能しない可能性があるので、注意が必要です。
物流業界で行うDXのポイント
物流業界で行うDXのポイントとして、以下の3つがあげられます。
- ・現場と経営陣が協力してDX化に取り組む
- ・DX人材の確保に注力する
- ・DX化のパートナーシップを利用する
現場と経営陣が協力してDX化に取り組む
DX化を進めるうえで、現場と経営陣の綿密な連携は欠かせません。共通の目標を持たず、双方がバラバラに動いている状況では、新たなシステム導入は難しいでしょう。
DXの導入は、これまでの業務フローを大きく変更する可能性が高く、現場スタッフには一時的に負担を強いることになりがちです。現場の意見を無視して強引に進めてしまえば、大きな反発を買うおそれがあります。
DXが何をもたらすのか、何が改善されるのか。経営陣は、DX化の目的や導入するメリットを、現場のスタッフに伝える必要があります。現場に寄り添いながら指揮を執り、互いに協力できる体制を確立しましょう。
DX人材の確保に注力する
DXを継続して推進するためには、専門的な知識を有する人材が必要です。DXは、デジタル化を終着点とするのではなく、長期的な推進と改善を続ける必要があるからです。
人材を確保する手段として、外部からの採用が主な手段となりますが、近年はIT人材の不足により、優秀な人材を獲得しづらい状況が続いています。そのため、自社での人材育成もあわせて検討すると良いでしょう。
現場ニーズを把握し、肌感覚で市況と数値をとらえ、改善を推進していくことのできるリテラシーの高い人材を長期的に育てていくことが重要です。
DX化のパートナーシップを利用する
DX化のパートナーシップを利用する方法として、外部のDXサービスを利用する手があります。
工程別の課題にあわせて利用を検討するサービスを比較し、そのうえで導入すると比較的限定的なDX化の成功に結び付きやすいです。
物流業界で取り組まれている物流DXの活用事例
最後に、物流業界で実際に進められているDXの活用事例を紹介します。
AIによる配送ルートの最適化
従来、効率的な配送ルートを組み立てるためには、担当者の豊富な経験が必須でした。しかし、AIの活用で幅広い情報を適切に処理することができ、最適化されたプログラムによって誰でも最適な配送ルートを構築できます。
AGV(自動搬送ロボット)
AGVは、物流倉庫内で荷物を運搬する自動搬送ロボットです。AGVを導入すれば、従業員が倉庫内を歩き回って目的物を探さなくて済むようになります。
ドローンの導入
物流事業の効率化のために、運搬用ドローンの導入実験も行われています。実用化すれば、遠隔地や陸路での移動が困難な場所への配送が容易になるでしょう。
自動運転技術の活用
自動車の自動運転技術も実用化が近づいています。拠点間や指定場所への輸送を、自動運転で行う実験が進められています。
物流DXによって物流業務に変革をもたらそう!
物流DXやロボティクスの導入を通じて、物流現場が最大のパフォーマンスを発揮しつつ、物流業界の社会問題も解決していく……。
これに欠かせないのは、物流DXに対する知見、また足元の業務設計力やシステム開発力です。
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