インターネット上で時間や場所を選ばずにショッピングができるECは、その利便性の高さから急速に市場規模を伸ばしています。
しかし、EC物流においてはオンライン業務だけでなく、オフライン業務も必要です。そのため、EC事業者のなかには物流業務に負担を感じている企業も多いのではないでしょうか。そこで検討したいのが、物流代行サービスの利用です。
この記事では、EC物流の課題を踏まえて、物流代行の概要やメリット、利用する際の注意点などを解説します。
近年急速に拡大しているEC市場における物流の重要性
日本では、近年EC(ネット販売・eコマース)市場が急速に成長しており、企業のEC化も進んでいます。
経済産業省の「令和4年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2022年における物販系分野のBtoC(Business to Consumer)の市場規模は13兆9,997億円でした。そのうち、9.13%がECによるものです。
市場規模に対するEC化率は、2013年が3.85%、2018年では6.22%だったことから、ECの市場規模は急激に成長し続けていることが分かります。
EC事業を成功させるためには、物流の最適化が不可欠です。正確な在庫管理と迅速な配送、効率的な倉庫運営といった物流業務は、顧客満足度や事業競争力の向上につながります。
EC物流が抱える課題とは?
EC物流が抱える課題として、主に以下の5つがあげられます。それぞれの課題について具体的にみていきましょう。
- ・在庫管理に関する課題
- ・物流コストに関する課題
- ・人材確保に関する課題
- ・作業品質に関する課題
- ・サービスレベルに関する課題
在庫管理に関する課題
在庫をもつメリット
- ・欠品や受注機会損失の回避
- ・需要の急な増加にも対応できる
- ・商品に破損や不具合などがあった場合、即座に代品を提供可能 など
在庫をもつデメリット
- ・商品の値下げや廃棄による収益の悪化
- ・品質劣化などによる商品価値の低下
- ・在庫の維持費用や保管費用の増加 など
物販ビジネスには、季節性やセールの開催有無などにより、繁忙期と閑散期があります。需要が一定ではないため、EC物流は「在庫を適切な水準で保持することが難しい」という課題を抱えています。
在庫を過剰に抱えれば、売れ残りが発生して収益が悪化するおそれがあります。反対に、在庫が不足していると、顧客満足度の低下や受注機会損失につながってしまうでしょう。
在庫を適切に管理していくためには、ECとしての需要予測に加え、リアルタイムに在庫数や賞味期限などの把握ができる効果的な在庫管理手法が必要です。
物流コストに関する課題
物流コストの最適化もEC物流の課題です。物流業務では、下記のコストが発生します。
- ・倉庫で働く従業員の人件費
- ・倉庫の地代・賃料
- ・倉庫内で必要な設備や備品
など
これらのコストが膨らめば、固定費や変動費などが上がり収益率が下がりかねません。また、過大なコストは経営を圧迫するでしょう。
配送オプションの選択や物流アウトソーシングを導入するなど、物流コストの最適化を目指さなければ利益を捻出しにくくなります。
人材確保に関する課題
前述のとおり、物販ビジネスには、季節性やセールの開催有無などによる繁忙期と閑散期があります。通常、繁忙期と閑散期では必要な人材の数が異なるため、常に適切な人数を確保することが難しいという課題もあります。
「人手が足りないから」と新たに人材を雇用すれば、人件費が増加します。さらに、人材の教育にも多くの時間や費用がかかるでしょう。
しかし、人手が足りないまま業務を行えば、納品までに時間がかかったり、顧客に求められるサービスレベルを維持できず、経営に悪影響を与えてしまいます。
作業品質に関する課題
物流業務は人的作業も多く、ヒューマンエラーが発生します。
実店舗の物流業務では、納品先に誤った商品が届いた時点でミスに気づくでしょう。しかし、商品を顧客に直送するEC物流では、顧客のもとに誤った商品が直送されるとクレームにつながりやすいです。
このように、作業ミスは顧客からの信頼を失うことにつながります。そのため、正確なピッキングや梱包、正しい商品の配送などが求められます。
サービスレベルに関する課題
他社との差別化を図るためには、質の高い物流サービスの提供が求められます。もちろん、物流コストの安さも優位性を高めます。物流コストが安ければ、そのぶん販売価格を抑えることが可能です。
しかし、物流に最も大切なのはサービスレベルの安定的な高さです。販売価格が安くても、配送の段階で商品が破損したり、納期までに届かなかったりすれば、顧客の信頼は得られません。
他にも、納期や梱包状態、配送オプションの種類など、差別化できる要素は多岐にわたります。そのため、それぞれに対応できるシステムの導入や現場教育の実施も重要です。
物流代行とは?
前述した「EC物流が抱える課題」の解決に有効な手段が、物流代行です。
物流代行とは、物流業務を外部へアウトソーシングをすることをいいます。物流のノウハウや設備などを有するプロに物流業務を委託することで、自社で物流業務を行うよりも効率的かつ高品質な物流の実現が期待できるでしょう。
業者によって、対応している物流代行サービスの内容には違いがありますが、「商品の保管業務」「管理・受注処理業務」「発送準備・配送業務」といった物流の基本業務にはおおむね対応してもらえます。
物流代行にかかる費用相場
物流代行を利用する際にかかる費用の内訳と相場を、固定費と変動費に分けて紹介します。
【固定費】
項目 | 概要 | 相場価格 |
---|---|---|
基本料金 | 物流業務に必要な倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)などのシステムや機器の使用料 | 30,000円~/月額 ※初期連携費用は別途 |
保管料金 | 倉庫の保管場所の料金 倉庫の広さや立地により料金相場は異なる。 |
2,500円~7,000円/坪 |
【変動費】
項目 | 概要 | 相場価格 |
---|---|---|
入庫料金 | 商品を倉庫に搬入する際の荷受料 | 10円~30円/1商品 |
検品料金 | 入庫する商品を検品する際の作業料。個数や作業項目で料金が決まる | 10円~30円/1商品 |
ピッキング料金 | 出荷のために必要な商品を集める際の作業料 | 10円~30円/1商品 |
梱包料金 | 梱包にかかる料金。作業内容に応じて料金が変わる | 100円~400円/1商品 |
梱包資材料金 | 段ボールなどの資材にかかる料金 | 30円~200円/1梱包 |
発送料金 | 配送業者に支払う料金 | 400円~800円/1発送 |
物流代行を利用するメリット
物流代行を利用するメリットとして、以下があげられます。
- ・物流業務の品質が上がる
- ・社内リソースを他の業務へ回せる
- ・物流コストを変動費化・最適化できる
物流代行業者は、物流の専門的ノウハウや最新の知識を有するプロです。そのため、自社で物流業務を行うよりも、業務の処理速度や正確性、効率性が高まり、高い物流サービスの提供が可能となります。自社で人材を採用・育成する時間とコストも削減可能です。
また、物流代行の利用で、これまで出荷量が増えるほど物流業務に人的リソースを割り当ててきたものを、本来注力すべきコア業務や売り上げを伸ばす施策に集中できます。
これにより、企業の生産性が高まり、利益拡大を図れるでしょう。物流代行の利用は、商品と物流サービスの両方の品質向上につながります。
さらに、繁忙期でも閑散期でも発生する固定費(人件費や倉庫の賃料、車両費、設備投資など)を変動費化することで、トータルコストを抑えられるというメリットもあります。
物流代行を使用する際の注意点
物流代行の利用には多くのメリットがあるものの、利用時には以下のポイントに注意が必要です。
- ・委託先の個人情報管理が必要
- ・自社内にノウハウが蓄積されない
- ・自社のサービスに最適化された物流フローは構築できない(※プラットフォームの場合
EC物流では、顧客の氏名や住所といった個人情報を取り扱います。万が一、個人情報が流出してしまった場合は顧客からの信頼を失い、責任を問われるだけでなく事業の継続が難しくなるケースもあるでしょう。
そのため、物流代行業者の選定時には、個人情報の取り扱いに関して厳しいルールを設けていることを十分に確認し、委託先のチェックも継続する必要があります。
また、物流代行を利用すると、社内に直接的な物流業務のノウハウが蓄積されにくくなります。将来的に物流業務を内製化することになった場合、スムーズな移行が難しく業務が滞る可能性があります。
社内にノウハウを蓄積するためには、物流業務の担当者を自社内におき、物流代行業者との定例ミーティングなどでKPIを設定しながら物流業務の全体像を把握するとよいでしょう。
他にも、特殊な物流サービスを行っている場合は、委託費用が高くなるおそれもあります。特殊な物流である場合は、業者選びや費用対効果を慎重に検討する必要があります。
物流代行を利用したほうがよい企業の特徴
物流代行を利用したほうがよい企業の特徴として、以下の3つがあげられます。
- 自社内だけでは物流業務が追いついていない
- 変動費化させながらもサービスは拡充していきたい
- コストを抑えながらも事業拡大をしていきたい
自社で全ての物流業務を完結させようとすると、前述した課題に悩まされるケースが少なくありません。自社に物流のノウハウがない場合もあるでしょう。
そのため、上記に一つでも当てはまる場合は、物流代行の利用を検討してみてください。
物流代行業者を選ぶ際に確認すべきポイント
物流代行業者を選ぶ際に確認すべきポイントは、以下のとおりです。
- ・価格
- ・サポート体制
- ・基本的なサービスレベル
- ・倉庫のロケーション
- ・倉庫の管理体制
- ・配送方法のバリエーション
- ・WMSなどのシステム
- ・過去の実績
- ・拡張性
- ・システムの連携先
- ・流通加工への対応力
- ・人手不足への対策
- ・ロボットやマテハンの導入スキル
まず、各物流代行業者に見積もりを依頼し、前述した固定費・変動費について料金を比較しましょう。物流代行の料金体系には、「月額固定制」「成果報酬制」「月額固定制と成果報酬制のハイブリッド」があります。トラブルを防止するために、追加費用が発生するケースについての確認も重要です。
また、トラブル発生時の対応や、土日祝の出荷などといったサポート体制についても確認しておきましょう。特に、繁忙期と閑散期で売れる商品の数量に大きな差がある場合は、柔軟な対応が可能な物流代行業者を選ぶことが推奨されます。
さらに、物流代行業者の倉庫や設備、システム、保管環境が自社の商品に合っていることも重要なポイントです。取り扱う商品によっては許認可が必要となるため、商品の販売に必要な許認可を取得しているかどうかも確認しておきましょう。
他にも、自社商品と似た商品を取り扱った実績があるかを確認するのも重要なポイントです。実績が豊富であれば、商品管理のノウハウが蓄積されている可能性が高く、商品に適したサービスを受けられるでしょう。
EC事業の拡大を図るなら物流代行を利用しよう!
EC物流の課題解決には、物流代行の利用が役立ちます。
物流業務のアウトソーシングは、顧客に高品質の物流サービスを提供できるうえ、物流コストの低減も実現できます。人的リソースをコア業務に専念させることで業務効率や生産性が向上し、業績の向上も望めるでしょう。
「EC物流お任せくん」は、国内外に700を超える拠点を有する総合物流企業SBSグループが提供する、業種別プラットフォーム&サービスです。商品の入庫から出荷、流通加工、配送といったEC物流業務をワンストップで代行します。
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