EC物流ブログ

2024.09.04
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フルフィルメントとは?具体的な業務内容からフルフィルメントサービスと3PLとの違いも解説

EC・通販業界では、MDや販売だけではなく、受注の処理から顧客の手元に商品を届ける物流業務や商品や配送に関するカスタマー対応の領域も重要です。そこで注目を集めているのが、トータルで対応するフルフィルメントです。

今回は、フルフィルメントの役割とは何か、具体的な業務内容からサービスを利用することのメリットとデメリットまで解説します。また、フルフィルメントサービスと3PL(サードパーティロジスティクス)との違いにも触れ、顧客満足度の向上やブランドイメージの強化にどう貢献するかを掘り下げます。

フルフィルメントとは?

「フルフィルメント」とは、日本語で「履行」や「達成」という意味があります。オーダーフルフィルメント(Order Fulfilment )に語源があるといわれており、ECや通信販売において顧客の注文から商品の入庫、保管、発送、そしてカスタマーサポートまでの過程とそれに関する付帯業務全般を指す言葉です。

具体的には、受注受付や処理、商品の入荷や検品、保管、在庫管理、受注処理、ピッキング、梱包、発送などを指しており、場合によっては代金回収や返品、トラブル対応も含みます。また、フルフィルメントの役割は以前より対応範囲が広がっており、従来のいわゆるロジスティクスのような物の流れの戦略的視点よりも、顧客の注文視点で全体最適をはかるニュアンスが含まれているといえます。

フルフィルメントの重要性

EC事業を成功させるためには、購入者のタッチポイントにおける購買体験や、顧客満足度も重要な要素です。そのため、リアルなタッチポイントである商品の品質状態、お届け、カスタマーサポートなどに携わるフルフィルメント業務の重要性は高いといえるでしょう。

商品が顧客の手元に届くまでの過程でトラブルが発生したり、サービスのレベルが低かったりする場合、いかにサイトが使いやすく人気商品を取り揃えていても、顧客満足度は低下します。一方で、商品の到着までのプロセスのなかで品質、スピードなどが期待以上となれば、顧客体験の向上に直結し、リピーターの増加や収益増にもつながります。

そのため、EC事業者はフルフィルメントの各プロセスを慎重に管理し、この一連の流れを最適化することで、顧客満足度を高め、ブランドの信頼性を築き上げることができるのです。

フルフィルメントの業務内容

フルフィルメントには、具体的に以下の業務内容が当てはまります。

  • ・受注
  • ・入庫・検品作業
  • ・商品の保管
  • ・受注処理
  • ・ピッキング
  • ・検品・梱包
  • ・発送
  • ・決済業務
  • ・顧客対応

ここからは、それぞれの業務内容を確認していきましょう。

入庫・検品作業

「入庫・検品作業」とは、商品が卸会社やメーカー、或いは仕分けセンター等から物流倉庫に到着した際に行う作業です。

まず入荷予定情報との突合をし、明細書や納品書などと見比べながら商品の種類や数量、商品の品質をチェックします。入庫時の検品で問題を見落とすと、在庫管理や後続の業務時に、在庫の数値に差異が出てしまったり、受注後の品不足や品質不良につながってしまうため、RFIDやバーコードなどのシステム検品も活用します。

確実性の高い検品作業を行うことは、在庫の正確性、品質管理に不可欠です。

商品の保管

顧客からの注文情報に応じて出荷するまでは、在庫は商品ごとの特性に合わせて、ラックやパレットを活用して保管されます。近年では、自動倉庫や、物流ロボットなど高密度で保管できる仕組みを備えた倉庫も増加しています。

また、低温で保管する商品も増えており、冷凍・冷蔵・定温・湿度などの細かい温湿度管理や、防虫防鼠などの対策も、商材に合わせて行います。

保管場所は一般的にロケーション管理され、ピッキングの際に効率よく、ミスなく作業できるように割り振られ、在庫として格納されます。

受注処理

顧客からの注文を受けたら、出荷準備のために、受注処理を行います。その内容は企業によって異なりますが、受注対応から出荷までの一連の業務や、業務が流れるための受注変更、データ連携準備などの処理を行うことを受注処理と呼びます。

データ連携の仕様や構成によって必要の有無はありますが、一般的には在庫の引き当て確認や、受注データを出荷用のデータに変換する作業、物流サイドに追加で依頼する付帯作業の指示、出荷指示データの受け渡し、連携状況の確認などを行います。

ピッキング

「ピッキング」とは、出荷指示に従って注文された商品を正確に特定し、保管エリアからピックアップしてくる作業を指します。

保管している倉庫からピッキングを行う作業は、保管エリアが広いほど時間が必要です。その分改良の余地が大きく、効率的に行うためにはピッキング方法の効率化や、保管場所の設計、保管・ピッキング・仕分けの自動化、ロボティクス化などの工夫が求められます。

検品・梱包

ピッキングされた商品は、出荷前検品および、輸送に耐えられるよう、梱包作業を行います。要件にあわせて、ラッピング、のし、メッセージカードや同梱物を差し込む作業も行います。

輸送中の損傷を防ぐため、商品の保護に適切な包装材を選択します。例えば、破損しやすいデリケートなアイテムは緩衝材で包み、水に弱い商品にはビニールなど耐水性のある包装材を使用するといった具合です。

さらに、箱のサイズも商品に合わせて選びます。外箱の開封のしやすさ、商品の取り出しやすさなども、顧客満足度を上げるための重要なポイントです。また、昨今ではサステナブルな対応が求められており、梱包材の脱プラ化、簡易梱包化なども進んでいます。

発送

「発送」とは、梱包が完了した商品を顧客に届けるために、配送業者へと引き渡すプロセスです。

配送業者は、物流会社のWMSや、送り状発行システム経由で受信した情報と印字された送り状のデータに従って商品を集荷、配送します。

ユーザーの利便性を上げるため、宅配だけでなくコンビニ受け取りやメール便、置き配、専用便など、さまざまな配送手段が用意されます。また輸送は、Co2排出量が全体の18.5%を占める*といわれており、エコの観点から、再配達を抑制する置き配のような配送手段にもより注目が集まっています。

*出典:国土交通省「環境:運輸部門における二酸化炭素排出量」

決済業務

ECや通販における主な決済方法にはクレジットカード決済、コンビニ決済、郵便振替、代引き決済などがあり、各方法に応じた処理が必要です。また、代引きの場合は、商品到着時に顧客が商品代金と配送料を支払うため、配送担当者は代金回収業務も行います。

顧客対応

電話やメール、チャットなどで、顧客からのあらゆる質問や要望、クレーム対応等に応える顧客対応は、迅速かつ丁寧に行うことが求められ、この対応の質が顧客満足度に直結します。
コールセンターの体制や回線の設計、顧客対応履歴の管理方法・システム、マニュアルの精度や見直し、スタッフの教育、定期的なモニタリングなど顧客満足度の向上のための要素は多岐に渡り、継続的な改善活動が不可欠です。

フルフィルメントサービスとは?

「フルフィルメントサービス」とは、フルフィルメント業務の一部、またはすべてを代行するサービスです。ECや通信販売事業における流通の全体最適を目指し、注文から発送、顧客対応の工程の業務全般を支援します。

フルフィルメントサービスを利用すると、商品管理や物流業務全般、顧客対応にかかる負担から解放され、リソースの再配分が可能となります。これにより、EC事業者はコア業務である商品企画や販売活動、マーケティングなどに集中でき、運営効率が向上するでしょう。

フルフィルメントサービスと3PLの違い

3PL(3rd Party Logistics/サード・パーティ・ロジスティクス)とは、荷主の物流業務を第三者に委託することで、全体の効率化を図るサービスです。フルフィルメントサービスと同じく物流最適に関わるサービスですが、サービスに対する考え方が異なります。

フルフィルメントサービスは、ECや通販に限定し商品の在庫管理から受注処理、配送、返品処理にいたるまでの一連の業務全体を捉えた上で最適化し、包括的にサービス提供します。一方、3PLでは、幅広い分野に対応しつつ、サプライチェーン全体の最適化を主にQCDに着目しながら向上させていく物流委託の形態です。

フルフィルメントサービスを利用するメリット

フルフィルメントサービスを利用することで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • ・業務の効率化
  • ・固定費の削減
  • ・顧客満足度の向上
  • ・ブランドイメージの向上

これらのメリットについて、確認していきましょう。

業務の効率化

フルフィルメントサービスでは、多岐にわたる業務をプロに委託できます。通販業務に精通したプロが関わることで、EC業務全体の質も向上し、作業プロセスの効率化が図れるでしょう。

また、各業務をまとめてひとつの業者に委託することで、業者間で連携を取る必要がなくなります。結果的に、細かい無駄が省け、業務フローの最適化が実現します。

初期投資や固定費の削減

フルフィルメントサービスの導入により、倉庫やコールセンターを自社で確保する必要がなくなります。その結果、施設の地代や設備・機器にかかる初期コストや固定費、人材雇用にかかるコストを削減可能です。

また、商品やサービスの需要に繁閑差が生じる場合、フルフィルメントサービスならば委託量の調整が比較的容易であると言えます。これにより、企業は自社の人材や資金を重要な業務や新規プロジェクトに再投資でき、業績向上や企業成長が期待できるでしょう。

顧客満足度の向上

プロフェッショナルなフルフィルメントプロバイダーに業務を委託することは、顧客満足度の向上にもつながります。

専門業者に任せることで、注文処理、商品のピッキング、梱包、出荷といった一連のプロセスがスピーディーかつ正確に実行され、顧客は注文した商品をよりよい状態で受け取ることができるでしょう。

ブランドイメージの向上

フルフィルメントサービスの利用は、業務オペレーションの正確性と迅速性の確保、安定化を実現させます。

また、多様な決済方法や配送方法、ギフトラッピングなどのオプションのバリエーションが豊富だと顧客満足度が高まりやすく、リピート率も向上するでしょう。

スムーズな購買プロセスと丁寧な顧客サービスは、口コミやソーシャルメディアを通じてほかの潜在顧客にも伝播し、ブランドのポジティブな評価が広がるなど、効果的なプロモーションにもつながります。

フルフィルメントサービスを利用するデメリット

フルフィルメントサービスは多くのメリットを提供しますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。ここでは、フルフィルメント業務を外部に委託することによって生じる問題点として、以下について解説します。

  • ・フルフィルメントサービスの標準サービスレベルに倣う必要がある
  • ・フルフィルメントのノウハウが蓄積しない
  • ・顧客との接点が少なくなる

フルフィルメントサービスの標準サービスレベルに倣う必要がある

一般的にフルフィルメントサービスは、他のECや通販事業者と共通で使う共同利用型であったり、提供会社によって決められたルールやサービスレベルがあったりするケースが多いです。

そのため、企業ごとの細かい要望はサービス外となり、対応ができない場合があります。

例えば、特定の梱包方法や配送時間の指定など、独自のサービスを提供したい場合には、フルフィルメント業者の標準サービスに合わせる必要がある場合があり、不便を感じることがあるでしょう。

フルフィルメントのノウハウが蓄積しない

物流や顧客対応などの業務を外部の専門業者に全面的に委託する場合、社内にノウハウが蓄積されません。

そのため、フルフィルメントサービスに委託する際は、自社内での知識蓄積とスキル維持のバランスを考慮することが重要です。

顧客との接点が少なくなる

商品の問い合わせやクレーム対応を外部委託することにより、EC事業者は顧客からのフィードバックを直接受け取る機会がなくなります。

顧客との接点が減ると、細かいニーズへの対応やマーケティングが難しくなるでしょう。顧客ニーズに応え続けるためには、フルフィルメントサービス業者からEC業者へと、顧客の声を適切に届ける仕組み、フローを整えておくことが大切です。

フルフィルメントサービスを導入する際のポイント

フルフィルメントサービスの導入時、最適なサービスを選択するためにいくつかの重要なポイントがあります。ここでは、それぞれのポイントとして、以下のことを詳しく解説します。

  • ・フルフィルメントサービスを導入する目的を明確にする
  • ・提供されるサービス範囲を確認する
  • ・サポート体制を確認する
  • ・料金体系や水準が自社のビジネスに合致しているか
  • ・フルフィルメントの履行場所(物流現場・コールセンター等)を現地で確認する

フルフィルメントサービスを導入する目的を明確にする

フルフィルメントサービスを導入する際、最初に行うべき重要なステップは、導入する目的を明確にすることです。

市場には多数のフルフィルメントプロバイダーが存在し、それぞれ特徴やサービスが異なります。その中から自社の具体的なニーズや課題に合ったプロバイダーを選ぶためには、まずは明確な目的設定が必要です。

例えば、配送速度の向上やコスト削減など、自社の要求における優先度を決めて、プロバイダー選定の判断基準にしましょう。

提供されるサービス範囲を確認する

自社の目的が明確になったら、フルフィルメントプロバイダーが目的達成のためのサービスやノウハウを持っているかを確認しましょう。

フルフィルメントサービスと一口に言っても業務範囲は広く、細かい業務内容やサービスレベルは各プロバイダーによって異なります。また、得意とする業務内容、対応可能な企業規模、最新設備の導入など、さまざまな特徴や強みを持っている業者もいます。

そのため、自社の目的、扱う商品やターゲットとする顧客に合ったプロバイダーを選ぶことが大切です。

サポート体制を確認する

フルフィルメントサービスを利用する場合、通常はある程度長期の契約になることが多いでしょう。その間には、トラブルや緊急対応が必要なイレギュラーな事態が発生する可能性があります。そのため、あらかじめサポート体制を確認しておくことも重要です。

フルフィルメントベンダーやサービスごとに、あらかじめサポート体制やSLAが定められていることが多いです。

サポート体制の確認ポイントとしては、対応時間、連絡方法、言語対応能力、トラブル発生時の対応フローなどが挙げられます。また、定期的なレポート提供など、細かなニーズに応じたサポートについても確認しておきましょう。

料金体系や水準が自社のビジネスに合致しているか

フルフィルメントサービスの料金は通常、保管スペースの利用量、取り扱う注文の量や頻度、特殊な取り扱いが必要な商品に対する追加料金などに基づいて計算されます。また、短期間のキャンペーンやセール期間中に増加した在庫に対する料金体系が異なる場合もあります。

契約前にはこれらの料金体系を詳しく調べ、自社のニーズと合致するものを選択することで、自社のビジネスや展望と合っているものを選べます。

フルフィルメントの履行場所を現地で確認する

物流業界では、常温保管をベースとして、空調設備が整った「定温倉庫」や複数の温度帯を設定できる倉庫は、オプションとして提供されることが一般的です。

フルフィルメントサービス提供者がどのような保管環境を持ち、それが自社の商品の要件に合致しているかを確認することも、サービス選定の重要なポイントといえます。特に、食品、衣料品、化粧品などは、適切な環境での保管が品質維持のカギとなります。冷蔵や冷凍は可能なのか、特別な温度制御には対応しているのか、それぞれの温度を保った配送は可能なのかなど、詳細な情報を入手して検討しましょう。

このような履行場所の確認は、実際に現地に赴いて確認することが重要です。実際に現地を見てみないと、管理や運用のレベルが具体的に把握できず、サービスの質が想定と違ってしまう可能性があります。また、個人情報保護の面での対応が適切かどうかも、現地で確認しないとわかりにくい部分なので、あわせて確認しておきましょう。

自社の目的に合ったフルフィルメントサービスを導入しよう!

フルフィルメントサービスを導入する際は、自社の具体的な目的を明確にし、それに合致するサービスを選ぶことが重要です。今回ご紹介した、フルフィルメントサービスを選ぶ際のポイントなどを参考に、適したサービスを探してみてください。

また、自社の手間を大幅に削減し、より戦略的な業務に集中できるようにするために、「EC物流お任せくん」の導入もぜひご検討ください。

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